おむすび? ゆでぴ?
あ、なんだかお腹が空いてきました。
こんにちは、ビーハッピーおおむら編集部です。美味しいものの話かと思って、急いで取材に来た……のですが、どうやら違ったみたい。
『おむすび。』とは、新たにリリースされる大村市のスマホアプリ。『ゆでぴ』は大村市の地域通貨。どちらも2024年3月から使えるようになるそうです。
あったかいおむすびと茹でピーナッツ、食べたかったな~。 そんなことを思いながらアプリの仕掛け人たちに話を聞いてみると、おむすびや茹でピーナッツと同じくらい、あったかくて満たされるような思いを感じることができました。
『おむすび。』『ゆでぴ』とは?
「デジタルの力を活用してあらゆる立場の人がつながり支え合う市民参加型コミュニティの実現をめざす」ことを目的とした大村市の事業『しあわせ循環コミュニティ』の一環でつくられたアプリ。 どうやって使うのか、ざっくり説明します。
まず自分のスマートフォンに“基本のアプリ”である『おむすび。』をインストール。するとその中に、『ゆでぴ』などさまざまな“個別のアプリ”をインストールできるようになります。これらを利用するには、ID作成のためにマイナンバーカードが必要です。
“個別のアプリ”については、令和5年度は『ゆでぴ』のほか『子育て支援アプリ』『地域助け合いアプリ』が使えるようになります。来年度以降、順次増えていく予定です!
詳しいことは市のホームページで紹介していますが、ここでは大まかに各サービスのポイントをお伝えしますね。
- 母子手帳のように子どもの成長記録がつけられる
- 予防接種などの通知が個別に届く
- こどもセンターへの相談予約ができる
- 子育てに関する自分に合った情報を検索できる
- 「助けを必要とする人」と「お手伝いしたい人」をつなぐ仕組み
- 「お手伝いしたい人」は自分ができることや活動できる日時などをアプリに登録しておく
- 「助けを必要とする人」は依頼したいことや来てほしい日時をアプリへ入力する
- オペレーションセンターが「助けを必要とする人」の依頼内容を見て「お手伝いしたい人」を助け合いペアとしてつなぐ
まさかのアナログ人間!? デジタル事業に向き合う思いとは
というわけで今回は『おむすび。』『ゆでぴ』の開発に関わった、大村市企画政策部デジタル推進課 課長 山口理行さん、上岡あかりさん、十八親和銀行 デジタル化推進部 デジタル化企画グループ 部長代理 伊藤純さんにお話を聞くことにしました。
事業が始まったきっかけ、思い、その他気になることなどいろいろ疑問をぶつけましたよ!
本日はよろしくお願い致します!
大村市企画政策部デジタル推進課 課長の山口理行です。よろしくお願い致します。
同じくデジタル推進課の上岡あかりです。緊張します…よろしくお願い致します。
十八親和銀行 デジタル化推進部 デジタル化企画グルーブ 部長代理の伊藤純です。よろしくお願い致します!
まずは『おむすび。』『ゆでぴ』が生まれることになったきっかけを教えてください。
大村市は以前から、内閣府が掲げるスーパーシティ構想に合わせてデジタル化などの取り組みを検討していました。当初はね、すごい構想もあったんですよ。空飛ぶ車を造ろうとか、なんか壮大な。
でも、よく考えてみて……私たちがやるべきなのは、未来に向けて市民生活をより良くしていくことです。そのためにはちゃんと自分たちの足元を見て、身近な課題から着実に解決していくことが大事ではないかと。
そこで、私たち市職員だけでなく地元の金融機関やいろいろな企業の皆さんにも参画してもらって、大村の強みと弱みをいまいちど洗い出し、そこにデジタルをどう活用できるのか議論を重ね、たどり着いたのがこの事業だったんです。
そんな経緯があったんですね。議論の中で気付いた大村市の「強み」「弱み」ってどんなものがあったんですか?
強みは、まず人口が増えていること。特に子育て世代の転入が多く、これは全国的にもめずらしいことです。。
一方で弱みというか課題は、地域での人のつながりが昔と比べて希薄になっていることです。町内会加入率なんかも、人口の増加に反比例するように減少しているんですよ。
私も県外から大村に転入してきたんですが、たしかに隣近所の方々と関わりってあまりないかもしれません。災害や急病など万が一のことを考えると不安ですし、なんだかさびしい気がします。
そんなわけで、大村市の強みを最大限に生かしつつ、課題を解決していきたいと。そのためのツールになればと『おむすび。』『ゆでぴ』をつくりました。
そもそもお二人は、どういういきさつでこの事業に携わることになったんですか。デジタルにすごく詳しいとか?
いやいや、むしろ「なんで私が?」しかなかったです。以前は福祉の部署にいまして、デジタルに関わることはなかったですし、なんなら私生活でもできればあまり使いたくない方で。いわゆるアナログ人間というか……
課長~!(笑)上岡さんはどうですか?
実は私も……最近ようやくスマホ決済を使い始めたくらいで、ぜんぜん詳しくはなかったんです。
同じだった(笑)上岡さんは今年度に新卒で入職されたそうですが、市役所に就職した理由は?
学生時代から、人と接することが好きだったんです。就職活動をするようになってからは、もう一歩踏み込んで、人の生活に関わって助けになるような仕事がしたいと考えるようになって。
それで選んだ職場だったんですね。デジタル推進課に配属され、アプリづくりに関わると聞いた時はどう思いましたか?
最初は何もわからなかったので不安にはなりました。でもこの事業って、デジタルといってもパソコンにずっと向かっているわけではなく、いろいろな方と関わって物事を創り上げていくものなんだとわかってからは楽しくて。
やっぱり私の根底には「人と接するのが好き」がありますし、学生の頃に描いていた「人と関わり、助けになることがしたい」という希望を実現できているのかなと思うと嬉しいです。
山口さんは、事業に関わるようになって気持ちの変化はありましたか?
うーん「デジタルを好きになったか」と聞かれると、それはないかもしれません(笑)
でもね、そんな私でさえ、いろんなスマホアプリを使ってみると、やっぱりすごく便利だと実感するんです。これは本当に、現代社会に必要不可欠なものだなと。今の時代、これだけ多くの人が所有していて、なおかつ必ず持ち歩く、そういうツールは他にないですよね。
私たちがつくっているアプリにしても、何か新しいツールを用意するのではなく、いつも触れているスマホで使えるっていうのは、むしろハードルが下がって良いことだと思います。
市民の皆さまにも、もちろん『おむすび。』『ゆでぴ』に親しんでたくさん使っていただきたいですが、どちらかというと、人と人がつながったり、自分に必要な情報を手に入れたりするための「きっかけをつくるツール」になれたら嬉しいというのが本音です。
伊藤さんは、アプリの強みをどんなふうに捉えていますか?
このアプリのようにしっかりとしたセキュリティに守られてIDを便利に扱えるシステムって、実はなかなかないんですよ。個人情報はしっかりと守られつつ、自身の興味や関心がIDに紐づき「自分がほしい情報」が手に入るところが強みかと。
まだ始まったばかりのアプリですが、これから使っていただくほどに、かゆいところに手が届くことを実感していただけると思います!
みんな使えるの? トラブル対策は? 疑問をぶつけてみた
ここからは、編集部が気になった疑問をぶつけていきたいと思います。まず、このアプリを利用するにはマイナンバーカードの連携が必須とのことですが、みんなカードって持っているんですかね?
実は、大村市ってマイナンバーカード普及率が高いんです。
そうなんですか! 何か理由ってあるのでしょうか。
いや、そんなに特別なことはなくて。早い段階から出張申請窓口をあちこちに設けたり、市民の皆さんができるだけ手軽にカードをつくれるように仕掛けた結果だと思います。
そうなんです地道な積み重ねの成果だったんですね。市民の中にはスマホを持っていなかったり、持っていても操作を苦手とする方もいるかと思うんですが、それについてはどう考えていますか?か! 何か理由ってあるのでしょうか。
たしかに……実際にそういったお声もいただいていますし、私もデジタルが得意ではありませんでしたから、そういう方の気持ちはすごくわかるんです。
いろいろ考えていたんですけど……「人とつながりたい」という気持ちって、誰しも持っていると思うんです。それに対してデジタルという手段は、場所や距離などの制約がなく、人と人がつながれるツールになれるんだと、この事業に関わってわかりました。
市民の皆さまがつながれるように『おむすび。』『ゆでぴ』が機能するためにも、スマホ教室を開いたり、市役所でもダウンロードのサポートを行うなどして丁寧にサポートをしていきたいと考えています!
「地域助け合いサービス」のマッチングってどんなふうにするんですか? 助けに来てもらえるのはありがたいですが、知らない人が来るのはちょっと不安な気もします。
このサービスを利用していただく際には、必ず市職員が一人ひとり対面受付を行うことにしているんです。その方の人となりを把握するほか、どんなスキルを持っていて、どんなことで役に立ちたいと希望されているのか、それを引き出してマッチングに反映する目的もあります。
それなら安心ですね。でも、全員を対面受付するって、利用したい人が多くなってきたらすごく大変そう。
利用者を増やすことも大事ですが、まずは市民の皆さまが安心して利用できる基盤づくりを第一に考えています。まずは小規模から始めて丁寧に育てていき、ゆくゆくはボランティアセンターとの連携なども視野に入れ、面談の担当者も増やして、多くの皆さまに役立てていただける体制を整えていく予定です。
皆さまに安心して利用していただけるよう、私たちが「お手伝いしたい人」と「助けを必要とする人」の間に立って、細やかなコミュニケーションのサポートをしていきたいと思います!
デジタルが開く、しあわせが循環する未来へのトビラ
この事業を、これからどんなふうに進めていこうと考えていますか?
私たちは『おむすび。』『ゆでぴ』を、市民の皆さまと一緒に育てるアプリだと考えています。まずは存在を皆さまに知っていただくこと。そして利用した感想や厳しいご意見もたくさんお聞きして、ブラッシュアップしていきます。
皆さまからのご意見を吸い上げる仕組みをアプリ内に設ける予定もあります。そういう意味でも、マイナンバーを使ったIDで参加していただくという点にも意義がありまして。匿名ではないため発言の責任も伴いますが、顔の見える信頼関係の構築にもつながると思います。
アプリを一緒につくっていくことを通して、市民の皆さまともっと関わり、支え合っていけたら嬉しいですね。
最後に、この事業を通してどんな未来を描きたいか聞かせてください。
アプリがあると人と人がつながりやすくなりますが、大事なのはそのつながりが続き、少しずつでも広がっていくことだと思うんです。
そうして一人ひとりが今よりもっとしあわせに暮らせるようになり、大村のまち全体が明るくなって、しあわせが循環するようになるといいなと。そんな未来をめざして、私にできることを一歩一歩進めていきたいと思います。
デジタルのおかげで便利になったり、情報を入手しやすくなったりするのは、人生の選択肢が増えるということでもあると思うんです。今の子どもたちが大人になる頃、もっともっとチャンスや可能性が広がる未来を迎えられるように、私もまだまだ頑張っていきます!
私は学生の頃から、長崎県を良くすることに貢献したいとずっと思っているんですが、それには何か大きなことをやるよりも、一人ひとりの意思表示を大事にしたり、小さな魅力を可視化して前面に出したりするのが大事だと感じていて。
今テクノロジーがどんどん発展していく中、昔ながらの日本らしい文化が見直されていたりもしていますが、この事業も皆さまにとってそんな原点回帰のきっかけにもなると嬉しいです。
最後に
あったかい人間味にあふれた『おむすび。』『ゆでぴ』の仕掛け人たち。市民の思いに寄り添いながら、時には一緒に悩みながら、このアプリを共に育てていく。そこから広がるあたたかくてしあわせな未来が、笑顔の向こうに見えました。
さあ、この事業はまだ始まったばかり。これから面白くなりますよ~!
今後もビーハッピーおおむらは『おむすび。』『ゆでぴ』を追いかけていきます。次の記事もお楽しみに!
取材・文 ライター 北村 朱里
北海道札幌市出身、佐賀県唐津市在住。 コピーライター&コミュニケーション講師という二足のわらじでバタバタ走る個人事業主。 大村が大好きで、仕事にかこつけてちょくちょく来たいといつも思っている。 趣味は食べること、日本酒を飲むこと、人と会って話すこと。 悩みは声が大きすぎること。
編集・写真 編集長 くめ まゆみ
大村に住む人来る人が“Be happy”になりますように。大村の街が大好きで大村のが面白くて大好きだから、楽しく大村のこと発信しています。これからは市民で自分の地域を創っていく時代がくる。大村市は全国でも先駆けて「チーム大村」で街づくりを。大村にもやってきた“西九州新幹線かもめ”を追いかける鉄オタ。
助けたい人希望の56歳のおばちゃんです。記事、楽しく拝見しました。早期退職し暇な時間が少しできたので、健康なうちにその時間を大村の人の助けにいかせればと思っています。立ち上げ大変だと思いますが頑張って下さい。応援しています。